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想いにまかせて (2005年)

2005年2月7日(月)

昨年の12月に浅草のすぐ近くにあるミレニアムホールで 演奏会をさせていただきました。この公演はテノールの錦織健さんが企画して毎回い ろいろな演奏家を招いて行い、錦織さんは案内役に徹するという、なんだかもったい ないようなものです。錦織さんとはこの公演の一週間後にも川上村というところで、 今度は二人の歌とギターで公演しました。

歌の合間にお話をするわけですが、錦織さんがお客さんに楽 しんでいただこうと、一生懸命になっている姿に心うたれました。今までのクラシッ クの音楽家にあまりないタイプで素晴らしいと思いました。

話はミレニアムホールに戻りますが、このホールの一階に は池波正太郎コーナーがあって、作家の池波さんの手紙とか、創作活動のときに使っ ていた机とか、とにかくゆかりのあるいろいろな品が展示してあってそれは興味深い ものばかりでした。その一つに長谷川伸が書いた歌がありました。

「観世音菩薩が一体ほしいと思う五月雨ばかりの昨日今日」

池波正太郎が、書けなくてスランプに陥ったときに、師の 長谷川伸のこの歌で励まされたという言葉です。目の当たりにして、感慨深いものが ありました。僕は池波さんの大ファンで(といっても実際にお会いしたことはなく て、その作品でしか触れたことはないのだけれど)、私の人生の師といっても言い過 ぎではないのです。そもそも時代小説なんてややこしい年号が出てきたり、聴きなれ ない人の名前が多くて読むつもりなんかなかったのですが、何かのきっかけで「鬼平 犯科帳」を読み始めてから池波文学の世界にどっぷりと漬かってしまうことになりま した。とにかく面白くて、感情移入ができる文章なのでどんどん読ませられてしま う。エッセイ集にも実に味のある素晴らしい言葉がいっぱいあります。今は「真田太 平記」を読んでいますが、もちろん歴史の勉強にもなりますが、それより池波さんの 創作の部分が、きっと実際にこんなことがあったのだろうと思わせるように作って あって、実にドラマチックにできています。

池波作品はこれからも繰り返し読んでいきたい。