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想いにまかせて (2004年)

2004年8月28日(金)

つい最近、小学館から武満徹全集が発刊されました。とにかく武満さんの全作品―オーケストラ、室内楽、器楽 のソロ、映画・テレビ・芝居の音楽と、あらゆるジャンルの作品―が、58枚のCDに収められているものです。僕もその一部分に参加させていただきました が、編集者の話によると完成させるまで、足掛け8年かかったそうです。今までに聴いていない作品がたくさんあって、それは興味深いものです。

若い十代の頃の作品とか、二十代前半の作品も入っていて、それはきびしく美しい音楽です。かと思うとその頃書かれたコーラスの曲などは、これが同じ人かと思うくらい楽しく明るい曲もあります。いずれにしろ大変貴重な全集が出来上がったと思います。

先日その完成パーティーがあり、この作品ともいうべき全集の製作に携わった各方面の方々が集まりました。何 人かのスピーチの後、我々演奏家が何曲か演奏しましたが、丁度ジャズの渡辺貞夫さんも武満さんと一緒にお仕事されたとかで、素敵なサックスを聴かせていた だきました。

すべてが終わり最後に編集長が小学館のスタッフをひとりずつステージの上で紹介し始めると、僕の前に座って いた渡辺貞夫さんが楽器ケースからサックスを取り出して座ったまま吹き始めたのです。それも決して邪魔にならない音量で、ただ「スタッフの皆さんご苦労さ までした」という思いで吹いているのです。ナベサダって素晴らしい人だなって思いました。

 

 


 

2004年8月28日(金)

つい最近、小学館から武満徹全集が発刊されました。とにかく武満さんの全作品―オーケストラ、室内楽、器楽 のソロ、映画・テレビ・芝居の音楽と、あらゆるジャンルの作品―が、58枚のCDに収められているものです。僕もその一部分に参加させていただきました が、編集者の話によると完成させるまで、足掛け8年かかったそうです。今までに聴いていない作品がたくさんあって、それは興味深いものです。

若い十代の頃の作品とか、二十代前半の作品も入っていて、それはきびしく美しい音楽です。かと思うとその頃書かれたコーラスの曲などは、これが同じ人かと思うくらい楽しく明るい曲もあります。いずれにしろ大変貴重な全集が出来上がったと思います。

先日その完成パーティーがあり、この作品ともいうべき全集の製作に携わった各方面の方々が集まりました。何 人かのスピーチの後、我々演奏家が何曲か演奏しましたが、丁度ジャズの渡辺貞夫さんも武満さんと一緒にお仕事されたとかで、素敵なサックスを聴かせていた だきました。

すべてが終わり最後に編集長が小学館のスタッフをひとりずつステージの上で紹介し始めると、僕の前に座って いた渡辺貞夫さんが楽器ケースからサックスを取り出して座ったまま吹き始めたのです。それも決して邪魔にならない音量で、ただ「スタッフの皆さんご苦労さ までした」という思いで吹いているのです。ナベサダって素晴らしい人だなって思いました。

 

 


 

2004年7月15日(木)

6月中旬から下旬にかけて各地で、岸田今日子さんと一緒に、詩の朗読とギターで7回のコンサートを行ないました。
初日は神戸。リハーサルまで充分に時間があるのでホテルで二時間ほど休むことになりました。チェックインをすると、まだ部屋が出来ていないとのことで、 ロビーで話をしながら待っていたら、黒服の支配人らしき人が飛んできて、「岸田様、大変失礼しました。お茶券ご用意しましたのでティー・ルームでお待ちく ださい」と何度も頭を下げられます。もちろん岸田さんは「大丈夫ですよ」と遠慮されましたが、黒服の方が何回も勧められたので、お言葉に甘えることにしま した。岸田さんてすごいんだなと変なことで感心してしまった。そしてティー・ルームに入ると、今度はお茶を飲んでいた人たちの「アッ、岸田今日子さんだ」 という声が部屋全体にさざなみのように広がっていきます。なんだか自分までもが有名人になったような気がしてひと時よい気分を味わわせていただきました。
二日の間をおいて、信州の御代田町で演奏会がありました。ここは武満徹さんの奥さん浅香さんとお嬢さんの真樹ちゃんの住んでいるところで、今回もこのお 二人と町の人たちのおかげで演奏会が実現したものです。ここで初めてのハプニング。一部の最後にロルカの「死 ― 角に突かれて」という闘牛士の死を哀しんだ詩の朗読に、アルベニスの「アストゥーリアス」を当てる演目があります。ギターが最後の和音をフォルテで弾いた 瞬間に暗転になり、岸田さんはその間に舞台袖に帰り、少しおいて僕が「禁じられた遊び」を弾いて終わり、拍手をいただいて、袖で待っている岸田さんを招き 入れる形でステージ中央にお呼びして、二人でお客様にお辞儀をする段取り。ところがその日は、オーバー・アクションで舞台袖に向って手招きをしたら、誰も いない…。舞台に一人残っている私はどうすればよいのでしょう?そのうち、司会をしていた真樹ちゃんが、「岸田さんは楽屋で衣装の着替え中でーす」の声に お客様は大笑い。そのせいか、二部では会場の雰囲気がすっかり打ち解けて、お客様は楽しんでくれたようです。
その後、札幌、桐蔭学園、所沢、富山と四日間連続公演で移動も大変でしたが、岸田さんはぜんぜん疲れた様子も見せず、むしろ楽しんですらいるようでした。
岸田さんと一緒に仕事をしていていいのは、大らかでピリピリしていないところです。やはり楽しむようにしているから疲れないのでしょうか?それにしても 岸田さんのあのおっとりした雰囲気、初日に新幹線のプラットフォームで向こうから歩いていらしたとき、まるで夢の中から現れたようなあの雰囲気はどこから 出てくるのでしょうか。

 

 


 

2004年6月15日(月)

まずはじめに、昨年このウェブサイトを立ち上げましたが、長い間そのままになってしまったことをお詫び申し上げます。
これからは、随時、演奏会情報やショートエッセイをお届けしますので、是非、ご覧ください。

今日はその第1回目です。
4月の末に4年ぶりでスペインに行って来ました。16歳から20歳までの4年間住んでいた国なので、懐かしい所です。セビリアの街を歩いていたら、ラ ファエルというポピュラーの歌手のコンサートのポスターが貼ってありました(彼は僕が昔住んでいた頃、スペインのアイドル歌手で人気者でした)。40年過 ぎてどんな歌い手になったか見てみたくなり、早速チケットを買ってその日の夜街の郊外にある劇場に行きました。
9時半開演なのに30分遅れというスペイン時間…。
驚いたのは、ステージ袖から彼が現れた瞬間、セビリアの聴衆全員がいきなりスタンディング・オヴェイションで、しかも1曲もまだ歌っていないのに会場の あっちこっちでブラボーの連発、それが10分ぐらいの間鳴り止まない…。スペイン人の熱いハートを見せつけられた感じです。それから何と2時間半休憩なし で歌いっぱなし。聴衆は1曲終わるたびに大興奮で、終わったのが12時半。おかげで晩ご飯を食べそこないました。
ラファエルの歌は、彼がきっと40年の間いい人生を送ってきたであろうことを感じさせるものがあり、僕の心は充分に満たされました。
それにしても確かにラファエルの歌は素晴らしかったけれど、歌う前の10分間のスタンディング・オヴェイションは聴衆が歌手にエネルギーを送っているよ うにも感じられました。やはりライヴのコンサートというのは演奏家だけで作るものではなくてお客さんと一緒に作り上げていくものなのだと思いました。